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サンコー物産株式会社1975年に創業したサンコー物産の創業者である細川三郎氏は、70歳になったのを契機に2人の息子に事業承継を行った。事業承継から2年経過したとき、友人の勧めで受けたコーチングにより、自分自身だけでなく後継者である息子の考え方も大きく変化したと言う。事業承継におけるコーチングとはどのようなものなのか。また大きく変化したきっかけは何だったのか。さらにその利点は何なのか。詳しくお話を伺った。

目次 【事業継承とコーチング】
1. サンコー物産の事業形態
2. 事業承継に至る経緯
3. 事業承継後の問題意識
4. 末松コーチとの出会い
5. コーチングの最初の印象
6. コーチングを受けるにつれ、素直な気持ちに
7. 後継者である息子たちも変化
8. 考え方を変えた、末松コーチならではのセッションの魅力とは
9. 中小企業にとって理想の事業承継とは
10. 今後のビジョン ・・・・・・・・・・・・・・
11. コーチ 末松からの一言

1.サンコー物産の事業形態

― サンコー物産の事業形態を教えてください。

和歌山工場で製造されるセパレータ関連部材サンコー物産株式会社は1975年に私がそれまで勤めていた会社から一部独立すると言う形で創業しました。主な事業は金属建材の製造と販売、樹脂建材の販売、外構工事、内装床工事です。最近ではホームセンターやゴルフ場資材納入部門の新規事業本部を設置し末端ユーザーの信頼も得ています。

本社は大阪市に置いています。その他、東京、名古屋、福岡など全国8箇所に営業所を置き、独自技術による自社製造のための工場を和歌山に置いています。また、社員の福利厚生施設として研修・保養センターを兵庫県播磨自然高原内に設けました。

2.事業承継に至る経緯 (ワンマン社長から70歳での退任まで)

― 事業承継においてコーチングを受けたという事ですが、サンコー物産の事業承継について詳しく教えてください。

サンコー物産は1975年、私が38歳の時に創業しました。それからは経理を担当してくれた家内と二人三脚でここまで成長させました。どちらかというと創業者にありがちな「超ワンマン」な経営だったかなと思います。私には双子の息子がおりましたが、それぞれが薬学、建材と事業とは別の会社に勤めていましたから、事業承継についてはあまり深く考えていませんでした。

ところが今から12年前、私が60歳の時に大きな病気をし、半年間もの入院を余儀なくされました。その時にさすがに今後の事が心配になったのでしょう。家族会議が開かれて2人の息子が会社に入ってくれることになりました。

幸い、私も元気になりましたので、2人の息子への承継を視野に入れつつ、引き続き経営に携わってきました。私が70歳になったとき、息子も会社に入ってちょうど10年になっていましたから、本格的に事業を承継しようと思い立ちました。それで私は会長に退き、2人の息子が社長・副社長に就任しました。今から2年前の2007年の事です。

3.事業承継後の問題意識 (どうやったら息子たちは変わるのか?他責にしていた)

― コーチングを受けるに当たって、2人のご子息への事業承継に問題意識があったのですか。

事業を承継したといっても、今から思えば実態は何も変わっていませんでした。経営に当たっての決定は全て私が行っていましたし、何か問題が起こって皆で解決策を話し合おうという事になっても、聞く耳を持ちませんでした。相変わらず「超ワンマン」体質が続いていたわけです。

それでも70歳を過ぎて、このままではいけないと言う問題意識はどこかにあったんでしょう。親子間の事業承継についてなどのセミナーにも、高い金を払って行っていました。どうしたら後継者である息子達のやる気を引き出せるか、社長・副社長の考え方を変えられるだろうかと思っていました。問題が自分にあるとは思っていなかったんですね。つまり他責にしていたんです。

4.末松コーチとの出会い

― トップコーチングスタジアムの末松さんを知ったきっかけは何ですか。 

私とは旧知の仲であるサンワ・リノテック株式会社の佐川博敏社長が、末松さんを紹介してくれました。末松さんはご自身で株式会社バーテックを、まだ20歳代の息子さんに事業承継しました。親子間の事業承継を成功させた上で、ご自分は経営の一線を退き、その経験を生かしてコーチングという全く新しい事業を一 から始められたと伺い、これはいっぺん話を聞いても損にはならないだろうと思いました。

― コーチングを受けられたのはいつ頃ですか。

2009年の4月に無料のオリエンテーションを受けました。本格的にコーチングを受けたのは5月からです。1週間に1度、40-50分くらいの電話でのセッションと、1ヶ月に1度、1時間くらいの対面でのセッションがありました。

5.コーチングの最初の印象 (コーチングって 頼りない ・・・・?)

― 最初にコーチングを受けたときの末松さんの印象を教えてください。

末松さんは、よく言えば聞き上手。悪く言えば頼りないなあと思いました。「これが末松流や」というパンチが感じられなかったからです。というのも最初の 頃、私は「コーチング」と言うものがどういうものかよくわかっていませんでした。問題点を話したらコンサルタントのように答えを末松さんが教えてくれると 思っていました。ところがそうではない。私は話す一方で、末松さんは聞く一方。そして「答えは細川さん自身の中にある」とおっしゃる。意味がわからず、大丈夫かなと思いました。

6.コーチングを受けるにつれ、素直な気持ちに (自分自身を省みる)

― 最初の印象は、コーチングを受けるに従って変わりましたか。

コーチングを受けた際の細川氏の手書きのメモ末松さんは、承認してくれたり、よく聞いてくれたので自分でも面白いように変わっていきました。例えば、創業前に勤めていた会社の社長の話をしながら、「あの社長は立派やったな。それに比べて自分はどうやろ?超ワンマンやな。もっと人の話を聞いて、任せるところは任せんといかんな」と自分を省みました。

親と子のコミュニケーションについて話をしながら、「もしかしたら自分の考えが間違っていたかもしらんな。究極のリーダー像とは、空気のようなものではないやろか」と思えてきました。

そして、後継者である息子達の意識を変えるよりも、自分自身の考え方を変えなければいけないなと思い始めました。そう思うと、素直な気持ちになれ、気持ちが楽になっていきました。

7.後継者である息子達も変化 (自分が変わることで、息子たちも積極的に行動しだした)

― 3ヶ月のコーチングが終わった今、変化したことはありますか。

まず、私自身が変わりました。社長・副社長である息子達の話や意見に耳を傾けるようになり、決断も息子達に任せるようになりました。「超ワンマン」から脱却し、究極のリーダー像である「空気のような存在」になるように努力しています。私は後ろでどーんと構えていようと思えるようになりました。

私の意識が変わってくると、息子達が目に見えて変わってきました。自分達で本気で考え、決断し、実行するようになりました。今ではそれぞれが責任感を持って積極的に行動しています。

経営者となった息子達の考え方を変え、やる気を引き出したのは、私自身が変わることだったのだなとあらためて気づきました。

8.考え方を変えた、末松コーチならではのセッションの魅力とは

― ご自身の考え方を変えた末松さんのコーチングの魅力は何だと思いますか。

大きく言って4つあると思います。

◆マンツーマン(1対1)で双方向のコミュニケーションであること
まず、コーチングは電話セッションであれ、対面セッションであれ、1対1で受けるという事があると思います。1対多勢のセミナーではこうはいきません。 「親子間の事業承継」と一口に言っても、様々なパターンや問題点があります。個別に考えていくことで、必ずドンピシャな答えが見つかります。

◆レポートを見ながらじっくり考え直すことができること
末松さんは私との契約ではセッションが終わると、必ずレポートを出してくれます。その日、どんなことを話したのか、どんなテーマを考えたのか。そのレポー トを見ながら、私も自分で話をしながら感じたこと、考えたこと、気づいたことを書き出して、じっくり考えていきました。話をして終わり・・ではなく、レ ポートを出してくれたことが、深く考えて答えを導き出す手助けをしてくれたと思っています。

コーチの末松がセッション後に提出したレポート(左) 細川氏はこのレポートを綴じ、自ら付箋を付け、アンダーラインを引き、何度も読み返し、考えるきっかけとした(右)

◆話を聞きだしてくれたこと
やはり「末松さんは聞き上手」であることも大きいと思います。効果的な質問や承認をしてくれて問題点の答えに至る話をじっくり聞きだしてくれる。私も話を しながら、考えて、答えを導き出していく。「こうあるべき」ではなくて、相手の話に耳を傾けてやるという姿勢は、末松さんから学んだところもあると思いま す。人間は長く生きていると「アカ」のようなものがついてきて、それはなかなか取れません。それを少しずつはがし、素直な気持ちにしてもらえたことを感謝 しています。

◆本音で、ズバズバ フィードバック                               経営者は孤独で す。特に私のように超ワンマンでやってきていればなおさらです。息子への事   業承継となると、事業者と後継者というだけでなく、親と子のコミュニケー ションも問題になってきます。そんな時、末松さんはご自身の経営者の体験を踏まえて、本音でズバズバものを言ってくれました。行司役となり、鏡となって、 デリケートな領域に入ってくれた。それは資格だけ持っていれば良いというものではなく、経営者の体験を活かしてのコーチングとなっていたように思います。

9.中小企業にとって理想の事業承継とは

― 細川会長は事業承継を70歳になって行いましたが、最適な時期・タイミングはいつだとお考えですか?

会社員の定年は60歳ですよね。これは良く考えられているなと思いますよ。体力・知力はまだまだあるとは思っても、少しずつ衰えを見せ始める。そんな時期が60歳です。その頃までに事業承継について考えるべきではないでしょうか。私は少し遅かったようです。70歳にもなって何をやっているのやと、サンワ・リノテックの佐川社長も心配してくれたのかもしれません。

事業には創業期・発展期・安定期とあると思います。創業者のポリシーで創業期と発展期は乗り切れると思いますが、安定期に入ったら次の世代のことを考え始めたらいいでしょう。

金融・調達・販売先の道筋をきちんとしときさえすれば、事業承継はうまく行くと考えられていますが、ここには人間の感情と言うものが入っていませんね。これにはいわゆる士業といわれる専門家がいないんですよね。そこで末松さんのような経営者であり事業承継コーチングをされている方を活用すればよいのではないでしょうか。

10.今後のビジョン

― 細川会長の今後のビジョンをお聞かせください。 

「末松さんは心に大きく残る人になりました」と細川氏コーチをつけてからの1年間、つまり来年の5月までに事業承継を完全に終わらせようと思っています。それからまた次のステージに立ちたいですね。創業者から二代目への事業承継のモデルとして、私が体験したことや考えたことが、どなたかのお役に立つかも知れませんし。末松さんともいっしょに何かできるかもしれませんね。楽しみです。末松さんも事業承継をみとどけてほしいと考えております。これからもよろしくお願いいたします。

お忙しい中、有り難うございました。
また機会がありましたら、後継者である社長・副社長のお話も伺いたいと思います。よろしくお願いいたします。

■≪コーチ 末松からの一言≫
コーチングの特徴として、「自発性を促すような聞き方」、「発想を拡げる質問」、「承認することの重要視」、「個別対応」、「一方通行から双方向へのコミュニケーション」、「コーチから見えるありのままの様子や状況を伝えるフィードバック」があります。これによりコーチングを受ける方は、その人固有の目標・ペース・環境状況に合わせて継続的にサポートされ、自己弁護や自己否定ではなく、客観的に自ら省み、改善点を見つけ出すことができるのです。

細川会長は、わずか3ヶ月間のコーチングで、親子間の事業承継を成功に導く大きな一歩を踏み出されました。今後も期日の入った目標達成ができるよう、継続的にサポートしていければと思っています。

※ サンコー物産株式会社のWebサイト
※ 取材日時 2009年10月
※ 取材・制作 カスタマワイズ 柳瀬美仁

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PROFILE

末松大幸(すえまつ ひろゆき)
1951年 大阪府大阪市生まれ
1970年創業者である父・末松富三郎の死去に伴い、京阪刷子製作所・代表取締役就任。1989年(株)バーテックへ社名変更後、2008年代表取締役会長就任。
同年、中小企業専門のビジネス・コーチとして開業。
詳しくはコチラから

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