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事業継承対談
事業継承対談 事業継承にコーチングが果たす効果とは?
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この座談会は、株式会社バーテック末松大幸前社長(57歳)から息子・末松仁彦(27歳)への事業承継で、どのようにコーチングを活用し成功したかを、インタビューしたものです。
株式会社バーテック…大阪市。1962年設立。資本金4,500万円。工業用特殊ブラシの製造・販売が主。

事業承継への関心は高くても、様々な不安があった
コーチングが、その壁を破り自信をつけさせた

2008年7月1日に父である末松大幸社長(57歳)が会長へ、息子である末松仁彦さん(27歳)が社長へ就任されました。社長自身が、バーテックを自分が継ぐと意識していたのは、いくつぐらいからですか?

社長: かなり早かったと思いますよ。やっぱり周囲からは社長の息子という目で見られていましたから。会社のイベントに参加しても、「社長の息子」として皆さんと接していましたし、高校の時から休みの日は、会社で働いていましたので、わけのわからないまま営業に連れていかれ、お客様から「継ぐんか?どうなんか?」って言われたこともありました(笑)。
会長: 今で言うところの、インターンシップですわ(笑)。
社長: また、いいように言って(笑)。

そういう環境でしたら、仁彦さんも確かに自然と考えますね。
会長は、息子さんに会社を継がせる準備をしていたのですか?

会長: はい。海外の取引先のお客様が来日した時も先方は家族(子供連れ)で来日しましたので、息子に「一緒に遊んでおいで」と言って子供レベルの交流を通じて、意識させたりしていましたね。
社長: 父からは、やはり小さな頃からそのような育てられ方でしたので、「会社を継ぐんだろうなぁ」とは思っていたのですが、「じゃあ、いつ継ぐ?」という疑問と、「自分の人生これでいいのだろうか?」という不安がありました。「会社の経営がどうとかではなく、自分がこれから生きていく中で、バーテックという会社と、どう付き合っていこうか?」ということを考えていました。

大学を卒業されてから、別の世界を見てみたいという気持ちは、ありませんでしたか?

社長: 大学の終わり頃に中小企業の経営者の方と一緒に、スウェーデンやデンマークなどの北欧の新事業を見学するツアーがありまして、参加者の中に2代目・3代目の経営者の方もたくさんいらっしゃったのですが、なぜか皆さん元気がないんです。会社を継承する前は、大企業に勤めていらっしゃったみたいで、「結構いいところまで出世したのに、親の会社を継いだら希望が持てない」みたいな雰囲気でした。
そんな中で、自分と同じように大学を卒業後、親の会社に入社された食品業界の経営者の方がいまして、その方が経営を引き継いで業績を伸ばしていて、とてもいきいきとしていたんです。
「親の会社を継いだ以上は、自分が頑張って会社を成長させよう」という意識のもとで経営されていたと思うんです。その時に「ああ、そういう考え方もあるな」と強く感じ、事業承継に対する否定的な面を見直すきっかけになりました。その方が、今の自分の生き方のモデルになりました。

父の立場から、事業承継を進めるにあたり不安な点はありましたか?

会長: いざ、入社させるにあたり、社員たちとうまく仕事をやっていけるのか?という不安はありました。仁彦が大学3年生の時に、ISO9001、14001を取るとお客様に豪語していたにもかかわらず、足踏みしていたことが、当時の経営課題でした。家が一戸建つくらいの投資をしていましたので、後にひけないという状況でした。
そんな時に、仁彦は大学での専攻が環境経営でしたので、それがISOの取得に必要な要素でもあったんです。社内の環境管理責任者が、ISO取得に向けて1人で頑張っていましたが、私から息子に「バックアップしてくれないか」とお願いし、それがきっかけで、仁彦もこれまでとは違った形で、会社の社員たちと一緒に仕事にかかわることができ、結果としてISOも取得できました。
またその頃、コーチングに興味を持ち始めていて、「これからのリーダーがマネジメント能力を身に付ける上で、コーチングは重要な資質になる」と考えていましたので、仁彦と一緒にコーチングの説明会やコーチング・トレーニング・プログラムを受けたりしていました。
ただ、「事業承継のためになるから」とは言えませんので、「これをやっといたら就職に有利だぞ」と言って、連れて行きましたね(笑)。

社長は、コーチング・トレーニング・プログラムを受けてみてどうでしたか?

社長: 私も同じ時期、ちょうど壁にぶつかっていたんですよね。環境管理に関して社員の皆さんに「こうしてください」と指示を出しても、なかなか動いてくれない。「この会社はISOなんか取れるわけがない」って言っている年配の社員の方もいました。
「どうして社員が動いてくれないのか?」当時、自分は全然分からなかったですから、学校で学んだことをよかれと思ってやっていることが、他の人にとっては負担になることもあるということが見えてなかったんですね。
自分が学校でインプットしたことをどうやって社会にアウトプットするかという点は悩みましたね。「目標を達成するには、コミュニケーションが必要だ」と気づき始めた時に、父からコーチングの存在を知り、「これは、仕事で活かせるな」と思ったのが、コーチングを学ぶきっかけでした。
会長: 確かに私から見ても、やらされているという意識ではなく、仁彦自身が必要と感じ、自分から進んでコーチング・トレーニング・プログラムに取り組んでいるように感じられましたね。

コーチング・トレーニング・プログラムの話が上がりましたが、そもそもコーチングを事業承継にも活かせると考えた理由から、お聞かせ下さい。

会長: 「人は理屈では動かない、人は感情で動く動物である」という考えが、根底にありました。
事業承継となると、弁護士さんや税理士さん、金融機関の方々に相談はしますが、その内容は「理屈」の部分だと思うんです。
事業承継は、理屈の部分もある一方で、「感情の部分をテーマにサポートしてくれる人が必要だ」と思っていました。
「感情」の部分は、親子の微妙な関係など、いろいろと深い問題を抱えていますので、事業承継では経営を引き受ける側に対しても、サポートが必要だと思っています。
事業承継といっても、社員に継がせたり、他社に売ったりと色々な形がありえるとは思いますが、いずれにしても、人と関わることなんです。だからこそ「情」の部分が大切になってくると思いますし、「人の情」をコーチングでフィードバックし、サポートすることが必要だと考えています。

バーテックの事業承継におけるコーチングの導入効果について、経営を渡す側と引き継ぐ側、それぞれの立場から聞かせて下さい。

会長: 事業承継を進めていく中で、「経営を渡す側がどれだけ経営に口を挟むか」というところが、ポイントだと思うんです。私は一貫して挟まないようにしてきました。以前の私はワンマンな中小企業の経営者でしたから、もし自分がコーチングを受けていなかったら、かなり口を挟んでいたと思います。そこが大きな違いですね。
「相手から求められて、初めて相談に乗る」というスタンスを自分が持てたことが、コーチングの大きな効果だと思います。
社長: そうですね。コーチングを勉強したことで、社内に共通言語が生まれたという点が大きいです。
もしみんなで一緒にコーチングを勉強していなかったら、その言葉のための会議が必要になってくると思うんです。
お互いの共通言語が社内にできているから、社員同士の相互理解が進み、経営の意思決定が速くなる。
これは大きなメリットですね。

そして、「社員が自分で考え行動する」という自主性を発揮するようになったことも、大きいと思います。
また、先ほど会長が言っていましたが、事業承継を行った後に、譲っただけで何もすることがなければ、寂しいだけだと思いますが、会長と私、それぞれが持っている経営ビジョンについて、コーチングを通じて話すことができることも、コーチングのおかげだと思います。
きっと会長もコーチングに出会わなければ、ただ会社に残って、目につくことをビシビシ指摘するだけになってしまったと思います。
「会長が新しくコーチング・ビジネスを始める」ということ自体が、事業承継にコーチングが活かされた結果だと思いますね。
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PROFILE

末松大幸(すえまつ ひろゆき)
1951年 大阪府大阪市生まれ
1970年創業者である父・末松富三郎の死去に伴い、京阪刷子製作所・代表取締役就任。1989年(株)バーテックへ社名変更後、2008年代表取締役会長就任。
同年、中小企業専門のビジネス・コーチとして開業。
詳しくはコチラから

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